日本映画界が注目する『下衆の愛』の俊英・内田英治監督が手掛けるオリジナル脚本に、唯一無二の存在感を放つ草彅剛が初のトランスジェンダー役として挑む。さらに、オーディションでバレエの才能を認められ、ヒロインを射止めた服部樹咲が本作で女優デビューし、真飛聖、水川あさみ、田口トモロヲが華を添える。ヒロインが踊る「白鳥の湖」「アルレキナーダ」などの名作に乗せて、主人公の母性の目覚めを”現代の愛の形”として描く、常識も性も超えた、疑似親子の切ないラブストーリー。
あなたの母になりたい──。
陽の当たらない場所で、あたたかな愛が生まれる。
新宿のニューハーフショークラブ<スイートピー>では、メイクしステージ衣装に身を包み働くトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)。洋子ママ(田口トモロヲ)が白鳥に扮した凪沙、瑞貴、キャンディ、アキナをステージに呼びこみ、今夜もホールは煌びやかだ。
「何みとんじゃ!ぶちまわすど!」
広島のアパートでは、泥酔した母・早織(水川あさみ)が住人に因縁をつけていた。
「何生意気言うとるんな!あんたのために働いとるんで!」
なだめようとする一果(服部樹咲)を激しく殴る早織。
心身の葛藤を抱え生きてきたある日、凪沙の元に、故郷の広島から親戚の娘・一果が預けられる。
「好きであんた預かるんじゃないから。言っとくけど、わたし子供嫌いなの」
叔父だと思い訪ねてきた一果は凪沙の姿を見て戸惑うが、二人の奇妙な生活が始まる。
凪沙を中傷したクラスの男子に一果がイスを投げつけ、凪沙は学校から呼び出しを受ける。
「言っとくけどあんたが学校でなにをしようと、グレようとどうでもいいんだけどさ、私に迷惑かけないでください。学校とか、謝りにとか絶対行かないって先生に言っといて」
バレエ教室の前を通りかかった一果はバレエの先生・実花(真飛聖)に呼び止められ、後日バレエレッスンに参加することになる。
バレエの月謝を払うために凪沙に内緒で、友人の薦めで違法なバイトをし、警察に保護される一果。
「うちらみたいなんは、ずっとひとりで生きて行かなきゃいけんけえ…強うならんといかんで」
凪沙は、家庭環境を中傷され傷つく一果を優しく慰める。
やがて、バレリーナとしての一果の才能を知らされた凪沙は一果の為に生きようとする。
そこには「母になりたい」という思いが芽生えていた──。
|凪沙|
1974年7月9日生まれ。1991年CDデビュー。主な出演作は、『黄泉がえり』(03/塩田明彦監督)、『日本沈没』(06/樋口真嗣監督)、『あなたへ』(12/降旗康男監督)、またテレビドラマは「僕の彼女と彼女の生きる道」(04/CX)、「任侠ヘルパー」(09/CX)など、多数作品に出演を果たす。2017年9月にはオフィシャルファンサイト「新しい地図」を立上げ、その後自身主演の『光へ、航る』(太田光監督)を収めたオムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』(18)は2週間限定公開の中、28万人以上を動員し、大ヒット。また、音楽劇「道」(18/演出:デヴィッド・ルヴォー)、「家族のはなし」(作/演出:淀川フーヨーハイ、あべの金欠)、「アルトゥロ・ウィの興隆」(作:ベルトルト・ブレヒト/演出:白井晃)など、舞台作品にも出演。その他出演作に、西加奈子原作の『まく子』(19/鶴岡慧子監督)、『台風家族』(19/市井昌秀監督)がある。
|桜田一果|
2006年7月4日生まれ、愛知県出身。4歳からバレエを始め、第76回NAMUEバレエコンクール名古屋 第1位、平成29年・30年ユースアメリカグランプリ日本ファイナル進出、NBAジュニアバレエコンクール東京2018 第1位など輝かしい成績をおさめる。演技未経験ながら、本作のオーディションで数百人の中からヒロインの座を射止めた。
|瑞貴|
1990年1月28日生まれ、愛知県出身。2017年、映画『ダブルミンツ』で初主演を務めたほか、主な映画出演作は、『ゼニガタ』(18)、『恋のクレイジーロード』(18) 、『デッドエンドの思い出』(19)、などがある。舞台「銀河鉄道の父」(今秋10/24〜新国立小劇場)に出演予定。
|キャンディ|
1993年生まれ、東京都出身。2014年『ポルトレ PORTRAIT』で映画主演デビュー。18年第10回TAMA映画賞にて最優秀新進男優賞を受賞。主な代表作に、映画『太陽を掴め』『サラバ静寂』ドラマ『左ききのエレン』『エ・キ・ス・ト・ラ!!!』など。今後の公開予定に、映画『滑走路』2020年秋、映画『無頼』2020年12月、映画『プリテンダーズ』2021年夏、映画『ジャパニーズスタイル』がある。
|アキナ|
1989年生まれ、奈良県出身。トランスジェンダーであることをカミングアウトし、性別の垣根を超えて、自分らしさを表現することを目標とし幅広く活躍中。主な出演作は、2016年舞台「GOKU」、2017年舞台「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」、2018年舞台「美少女戦士セーラームーン」(東京・パリ・ワシントン・ニューヨーク公演)、2019年東海テレビ「さくらの親子丼2」、2019年舞台「Get Back!!」などがある。
|桑田りん|
2000年10月5日生まれ、東京都出身。どこか懐かしさを感じさせる明るい笑顔と、爽やかな存在感が魅力。優しくナチュラルな雰囲気が印象的な期待の新人。主な出演作に、PARCO Produce公演 舞台『転校生』(19)(作:平田オリザ、演出:本広克行)、YouTubeにて主演したショートフィルム『アルキスマホ』などに出演。
|桑田真祐美|
1981年12月19日生まれ、東京都出身。99年にデビュー、グラビアモデルから、映画、ドラマ、舞台まで幅広く活躍。主な出演作に、『CUTIE HONEY キューティーハニー』(04)、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07)、『GOEMON』(09)、『すべては海になる』(10)、『抱きしめたい-真実の物語-』(14)、『リングサイド・ストーリー』(17)、『ラプラスの魔女』(18)、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」(18)などがある。
|桑田正二|
1970年11月15日生まれ、埼玉県出身。主な出演作は、『THE LAST MESSAGE 海猿』(10)、『るろうに剣心』(12)、『BRAVE HEARTS』(12)、『桜姫』(13)、『MONSTERZ モンスターズ』(14)、『MOZU 劇場版』(15)、『秘密 THE TOP SECRET』(16)、『ミックス。』(17)、『OVER DRIVE』(18)などがある。
|武田和子|
東京都出身。舞台「ストリッパー物語」で鮮烈なデビューを果たす。主な出演作は、『時をかける少女』(83)、『夢』(89)、『死国』(99)、『喰女クイメ』(14)、『百円の恋』(14)、『まなざし』(16)、『焼肉ドラゴン』(18)、『まく子』(19)、『楽園』(19)、『his』(20)などがある。公開待機作に、『海辺の映画館キネマの玉手箱』(7/31)、また舞台「ビリーエリオット」が夏再演。
|桜田早織|
1983年7月24日生まれ、大阪府出身。主な出演作は、『今度は愛妻家』(10)、『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』(11)、『バイロケーション』(14)、『太陽の坐る場所』(14)、『福福荘の福ちゃん』(14)、『後妻業の女』(16)、「東京女子図鑑」(18/Amazonプライム)、「ダブル・ファンタジー」(18/WOWOW)、「スキャンダル専門弁護士QUEEN」(19/CX)、『グッバイ嘘から始まる人生喜劇』(20)などがある。公開待機作に、『喜劇 愛妻物語』(20公開)、『滑走路』(20公開)がある。
|洋子ママ|
1957年11月30日生まれ、東京都出身。主演映画『鉄男』(89)で注目を浴び、俳優、映画監督、ナレーター、ミュージシャンとして幅広く活躍。監督作に「色即ぜねれいしょん」(09/新藤兼人賞銀賞受賞)、ピース オブ ケイク」(15)、出演作に『終わった人』(18/中田秀夫監督、『パラレルワールド・ラブストーリー』(19/森義隆監督)、『見えない目撃者』(19/森淳一監督)、『ファンシー』(20/廣田正興監督)、公開待機作に、『#ハンド全力』(20/松居大悟監督)がある。
|片平実花|
1976年10月13日生まれ、神奈川県出身。1995年宝塚歌劇団に入団し、2007年花組トップスターに就任。2011年に退団後は舞台のみならず、映画やドラマに活躍の場を広げる。主な出演作に、舞台『恋と音楽』(12年)、ミュージカル『マイ・フェア・レディ』(16年)、舞台『プレイヤー』(17年) KERA CROSS『グッドバイ』他。映画『柘榴(ざくろ)坂の仇討』(14年)、『娼年』(18年)、『愛なき森で叫べ』、ドラマ『相棒』(12~15年)、『あなたの番です』(19年)など。
ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。週刊プレイボーイ記者を経て99年「教習所物語」(TBS)で脚本家デビュー。14年「グレイトフルデッド」はゆうばり国際ファンタスティック映画祭、ブリュッセル・ファンタスティック映画祭(ベルギー)など多くの主要映画祭で評価され、つづく16年「下衆の愛」はテアトル新宿でスマッシュヒットを記録。東京国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭(オランダ)をはじめ、世界30以上の映画祭にて上映。イギリス、ドイツ、香港、シンガポールなどで配給もされた。近年はNETFLIX「全裸監督」の脚本・監督を手がけた。
東京藝術大学作曲科卒業、2002年に音楽レーベルATAKを設立。作品は先鋭的な電子音楽作品からピアノソロ、オペラ、映画音楽、サウンド・インスタレーションまで多岐にわたる。2012年、初音ミク主演による人間不在のボーカロイド・オペラ『THE END』を発表。同作品はパリ・シャトレ座での公演を皮切りに現在も世界中で公演が行われている。2018年にはAIを搭載した人型アンドロイドがオーケストラを指揮しながら歌うアンドロイド・オペラ『Scary Beauty』を発表、日本、ヨーロッパ、UAEで公演を行う。2019年9月にはアルス・エレクトロニカ(オーストリア)で仏教音楽・声明とエレクトロニクスによる新作『Heavy Requiem』を披露。人間とテクノロジー、生と死の境界領域を作品を通して問いかけている。2021年8月には新国立劇場で新作オペラ作品『Super Angels』を発表予定。
2020年/日本/124分/G
製作:CULEN/配給:キノフィルムズ
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