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2020年6月10日(水)より各種プラットフォームにて配信開始
その世にも奇妙な事件は、妖しい霧が立ち込めるクリスマス・シーズンの田舎町アヴェショーで起こった。地元の純真な少女アンナ・ルーが、教会に行くため自宅を出てまもなく忽然と消えてしまったのだ。捜査の指揮を執るため都会からやってきたヴォーゲル警部は、この目撃情報も物証も一切ない事件を何者かによる誘拐だと断定し、メディアの好奇心をあおってセンセーションを巻き起こす独特の捜査手法を実践していく。やがてヴォーゲルは捜査線上に浮かび上がったマルティーニ教授を容疑者と見なして追いつめるが、正体不明の連続誘拐魔“霧の男”に関する情報がもたらされ、ヴォーゲルの“完璧なる捜査”は根底から覆されていくのだった……。
『グレート・ビューティー/追憶のローマ』や『イル・ディーヴォ -魔王と呼ばれた男-』、そしてイタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニをモデルにした近作『LORO(ローロ) 欲望のイタリア』における名匠パオロ・ソレンティーノとのコラボレーションで絶賛を博し、日本でも多くのファンを獲得したトニ・セルヴィッロ。この“イタリアの至宝”とも呼ばれる世界的な名優に「脚本の質の高さに心を奪われた」と言わしめた『霧の中の少女』は、アルプス近郊の山間の町で発生した少女失踪事件の意外な成り行きを描いたミステリー・スリラーだ。セルヴィッロを驚嘆させた脚本と、その原作小説の作者であるミステリー作家ドナート・カリシの監督デビュー作。さらに『グラン・ブルー』『レオン』など幾多のヒット作でおなじみのジャン・レノが助演を務め、セルヴィッロとの初共演が実現したことも特筆すべき話題である。
かつてリゾート地として栄えた山間の田舎町アヴェショー。雪が降りしきる深夜、引退間近の精神科医フローレス(ジャン・レノ)が、警察から捜査への協力を要請される。彼が事情を聞くよう依頼された相手は、交通事故によって記憶が混濁したヴォーゲル警部(トニ・セルヴィッロ)だった。ヴォーゲルはアヴェショーを騒がせた少女失踪事件の任務を終え、都会に戻ったはずなのに、なぜ真夜中にこの町へ舞い戻ってきたのか。ヴォーゲルのシャツにこびりついている血痕は誰のものなのか。フローレスに促されて重い口を開いたヴォーゲルは、数週間前のクリスマス・シーズンにさかのぼり、世にも奇妙な少女失踪事件の全貌を語り始めた……。
アヴェショーの町が濃霧に覆われた12月23日の18時頃、教会に行くため自宅を出た地元の少女アンナ・ルーが謎の失踪を遂げた。捜査の指揮を執るためアヴェショーにやってきたヴォーゲルは、目撃情報も物証もないこの事件を何者かによる誘拐だと断定する。しばしばテレビに出演する有名人であるヴォーゲルは、アンナ・ルーの両親にテレビ向けの会見を行わせ、ヘリコプターや山岳救助隊を駆り出して大規模な捜索を開始。さらには顔なじみのニュース・レポーター、ステッラ(ガラテア・ランツィ)を利用して、この事件をイタリア全土の注目を集めるよう仕向けていく。ヴォーゲルが得意とするメディア戦略を駆使した捜査手法は効果てきめんで、あれよあれよという間に大勢のマスコミがアヴェショーに殺到してくる。
まもなくある動画を手がかりとして、失踪前のアンナ・ルーにつきまとっていた不審な白いオフロード車の存在が浮上し、車の持ち主である文学の教授マルティーニ(アレッシオ・ボーニ)に疑惑の目が向けられる。アンナ・ルーが通う高校でも教鞭を執っているマルティーニには共に暮らす妻子がいるが、事件当日の午後はひとりで外出しており、確かなアリバイがない。猛烈な取材攻勢をかけたマスコミがマルティーニに不利な証言を次々と報じたことで、たちまちマルティーニは八方塞がりの状況に陥っていく。
白いオフロード車が映り込んだ動画は、アンナに密かな想いを寄せていたマティアという少年が偶然撮影したものだった。それを入手したヴォーゲルはマルティーニが真犯人だとにらみ、動画をマスコミにリークした。こうして狙った“獲物”をじわじわと追いつめ、逮捕につながる決定的な証拠を捜し当てていくのがヴォーゲルのやり方だった。かつてイタリア中を震撼させた“破壊魔事件”で無実の男を死に追いやった苦い過去を持つヴォーゲルは、自身の汚名をそそぐために今回の事件の解決に執念を燃やしていた。
やがて川辺でマルティーニの血痕が付着したアンナ・ルーのリュックが発見され、ついにマルティーニは逮捕された。ところが任務を終え、アヴェショーを立ち去ろうとしていたヴォーゲルは、ベアトリーチェ(グレタ・スカッキ)と名乗るベテランの記者から思いがけない真実を知らされる。正体不明の連続誘拐魔“霧の男”の存在を示唆するその驚くべき情報は、ヴォーゲルの“完璧なる捜査”を根底から覆すものだった……。
|ヴォーゲル警部|
1959年、伊ナポリ県アフラゴーラ生まれ。1977年に劇団テアトロ・ステュディオ・ディ・カゼルタを設立。1986年に演劇グループ、ファルソ・モヴィメントに参加し、1987年には劇団テアトロ・ウニチの共同設立者となり、俳優および演出家として活躍する。1990年代前半から数多くの映画に出演しており、パオロ・ソレンティーノ監督と組んだ『L'uomo in più』(01)、『愛の果てへの旅』(04)、『イル・ディーヴォ -魔王と呼ばれた男-』(08)、『グレート・ビューティー/追憶のローマ』(13)で、日本の映画ファンにも広く知られるようになった。『イル・ディーヴォ~』と『グレート・ビューティー~』でヨーロッパ映画賞男優賞を2度受賞している。そのほかの主な出演作は『湖のほとりで』(07)、『ゴモラ』(08)、『われわれは信じていた』(10・未)、『穏やかな暮らし』(10・未)、『海の上のバルコニー』(10・未)、『眠れる美女』(12)、『至宝』(11・未)、『それは息子だった』(12・未)、『ローマに消えた男』(13)、『修道士は沈黙する』(16)、『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』(18)など。イタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニを主人公のモデルにしたP・ソレンティーノ監督作品『LORO(ローロ) 欲望のイタリア』(18)での圧倒的な存在感も記憶に新しい。
|ロリス・マルティーニ教授|
1966年、伊ベルガモ県サルニコ生まれ。19歳の時にショーや演劇への情熱に目覚め、1988年にイタリア国立実験センターを受験。惜しくも次点で不合格となったが、シルヴィオ・ダミーコ国立演劇学校に合格した。1990年代半ばから本格的に俳優としてのキャリアを踏み出し、数多くの映画、テレビ作品に出演。日本に紹介された主な作品には『輝ける青春』(03)、『13歳の夏に僕は生まれた』(05)、『グッバイ・キス -裏切りの銃弾-』(06・未)、『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』(07)、TVドラマ「戦争と平和」(07)、『狂った血の女』(08・未)、アンジェリーナ・ジョリー、ジョニー・デップと共演した『ツーリスト』(10)がある。
|ステッラ・オナー|
1967年、伊ローマ生まれ。シルヴィオ・ダミーコ国立演劇学校で演技を学び、1987年に舞台デビュー。それ以降、演劇、映画、テレビ作品で幅広く活躍している。パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ監督作品『フィオリーレ/花月の伝説』(93)で映画デビュー。ジュゼッペ・ピッチョーニ監督作品『映画のようには愛せない』(04・未)、パオロ・ソレンティーノ監督作品『グレート・ビューティー/追憶のローマ』(13)の2作品でダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の助演女優賞にノミネートされた。そのほかに日本に紹介された作品にはクリスチナ・コメンチーニ監督作品『心のおもむくままに』(95)があり、最近では、2018年にスタートしたNetflixのTVシリーズ「Baby/ベイビー」に出演している。
|アウグスト・フローレス|
1948年、モロッコ・カサブランカ生まれ。スペイン系の両親のもとで育ち、17歳の時にフランスへ移り住む。演技学校で学んだのち、プロの俳優としてのキャリアを歩み出し、リュック・ベッソンとの出会いによって彼の短編『最後から2番目の男』(81)、長編デビュー作『最後の戦い』(83)、『サブウェイ』(84)に出演。『グラン・ブルー』(88)のエンゾ役で絶賛を博す。さらに『ニキータ』(90)における“掃除屋”のキャラクターをふくらませた『レオン』(94)で世界的なスター俳優となった。その後はフランスとハリウッドを行き来し、アクション、コメディ、ヒューマン・ドラマなどの幅広い作品に出演している。主な出演作は『フレンチ・キス』(95)、『ミッション:インポッシブル』(96)、『RONIN』(98)、『GODZILLA』(98)、『クリムゾン・リバー』(00)、『シェフと素顔と、おいしい時間』(02)、『ルビー&カンタン』(03)、『エンパイア・オブ・ザ・ウルフ』(05)、『ダ・ヴィンチ・コード』(06)、『ピンクパンサー』(06)、『アーマード 武装地帯』(09)、『黄色い星の子供たち』(10)、『シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~』(12)、『プロヴァンスの休日』(14)、『THE PROMISE/君への誓い』(16)など。
1973年、伊ターラント県マルティナ・フランカ生まれ。大学で法学を学び、連続殺人犯をテーマにした卒業論文を執筆。その後、犯罪学と行動科学の研究を行った。1992年に劇団ヴィヴァルテを設立して戯曲を書き、4つの作品を上演。1999年にローマへ拠点を移し、数多くのTVドラマの脚本を手がけた。2009年に初めてのミステリー小説「Il Suggeritore」を発表し、イタリアのバンカレッラ賞、フランスのポラール賞を受賞するなど国内外で高い評価を獲得。続いて2011年に「Il Tribunale delle Anime」、2013年に「Il Suggeritore」の続編「L'ipotesi del male」、2014年に「Il cacciatore del buio」、2015年に『霧の中の少女』の原作となった「La ragazza nella nebbia」、 2016年に「Il maestro delle ombre」を発表した。『霧の中の少女』で映画監督デビューを果たし、ダスティン・ホフマン、トニ・セルヴィッロを主演に迎えた監督第2作のスリラー『L'uomo del labirinto』(19)もすでに完成させている。