配信
2021年6月16日(水)より各種プラットフォームにて配信開始
なぜ彼女は小学校に通うのか?
世界最高齢小学生の奮闘記から見えてくるケニアの学校教育の現在――
危険な道のりを何時間もかけ通学する子供たちをとらえた『世界の果ての通学路』(12)で、世界中を感動で包んだパスカル・プリッソン監督。本作で追うのは、“ゴゴ”の愛称で親しまれる94歳の小学生。出演者と時間をかけて信頼関係を築きあげ、そのリアルな姿をカメラに収めていく撮影スタイルは本作でも健在。数学や英語の授業、修学旅行、誕生日会、新寄宿舎の竣工式…ケニアの美しい自然を背景に、数々の歌と仲間たちの笑顔に彩られたゴゴの学校生活がありのまま切り取られる。そこから浮かび上がってくるのは、貧困や慣習などの理由から未だアフリカに残る教育問題。ゴゴは映画というものを知らなかったが、プリッソンの熱心な説得を受け「世界中に教育の大切さを伝えられるなら」と撮影を許可した。94歳にしてなお信念のもとチャレンジを続けるゴゴの姿は、閉塞感ただよう現在を生きる我々に勇気と希望を与えてくれる。
プリシラ・ステナイは、3人の子供、22人の孫、52人のひ孫に恵まれ、ケニアの小さな村で助産師として暮らしてきた。皆から“ゴゴ”と呼ばれる人気者だ。ある時、彼女は学齢期のひ孫娘たちが学校に通っていないことに気づく。自らが幼少期に勉強を許されなかったこともあり、教育の大切さを痛感していたゴゴは一念発起。周囲を説得し、6人のひ孫娘たちと共に小学校に入学した。年下のクラスメートたちと同じように寄宿舎で寝起きし、制服を着て授業を受ける。同年代の友人とお茶を飲んで一息ついたり、皆におとぎ話を聞かせてやることも。すっかり耳は遠くなり、目の具合も悪いため勉強するのは一苦労…。それでも、助産師として自分が取り上げた教師やクラスメートたちに応援されながら勉強を続け、ついに念願の卒業試験に挑む!
植民地時代の1923年に生まれた。他の少女たちと同様に学校に行くことを禁止され、若くして結婚。祖母の仕事を引き継いだ助産師は彼女の天職で、この地域の多くの住民の出産に関わる。1955年に亡くなった夫との間に3人の子供を授かり、さらに22人の孫と52人のひ孫に恵まれた。 2014年、学齢期のひ孫娘たちが不就学だと知ったことをきっかけに自身も聖書や憲法を読むため小学校に入学することを決意。当初は高齢すぎるため入学を拒まれるも、「自分が見本となることで、娘を学校に行かせない他の親たちを説得できるだろう」と、粘り強く校長に交渉し許可を得る。90歳にして6人のひ孫娘たちと共に小学校に入学した。得意な科目は数学。彼女の寄宿舎のドアには「学ぶことに年齢は関係ない」という看板が掲げられている。
同じクラスで勉強するひ孫。
ゴゴの復習を手伝っている。
学校の敷地内に住むゴゴの大親友。
自分も学校で勉強したいと夢を見ている。
ゴゴの信念に感動し入学を許可。
彼女を誇りに思い、気にかけている。
自然を題材に、ナショナル・ジェオグラフィックやBBCのTVドキュメンタリーを制作。12年間ケニアのマサイ村に通いつめ、世界で初めて部族の映画撮影に成功した『マサイ』(03)で劇場デビュー。2作目となる『世界の果ての通学路』(12)では、教育を受けるための道程で様々な障害に立ち向かう4つの国の子供たちの勇気と苦難を語り、フランスで150万人以上の観客を動員する大ヒットを記録。2013年セザール賞最優秀ドキュメンタリー賞を受賞し、世界中の35カ国に配給された。その他監督作に『LE GRAND JOUR』(15)など。 世界中の教育支援団体と強い絆を築いており、ハンディキャップ・インターナショナルの大使も務め、世界中で開催される多くの会議や討論会に参加している。