BD・DVD
2022年12月2日(金)発売
「自分はもう、失うものはなにもない」
内面をさらけ出した芝居が新たな傑作を生みだす。
名実ともに日本映画界を牽引する映画監督・阪本順治。“アグレッシブな円熟期”を迎えたこの鬼才が、40歳も年下の若手俳優・伊藤健太郎のために書き下ろしたオリジナル新作。伊藤健太郎からじっくりと話を聞き、作り上げた主人公のキャラクターには、このとき監督が感じた匂いや気配、独特の佇まいなどが色濃く反映されている。俳優としてゼロに戻り、内面をさらけ出した伊藤健太郎の演技、その周りを固めたのは、日本映画界きっての実力派たちだ。
淳の父親で、ガット船「渡口丸」の船長を演じたのは名優・小林薫。淳の母親で会社の事務を取り仕切る妻役には余貴美子。さらに眞木蔵人、笠松伴助、伊武雅刀、そして石橋蓮司らベテランから、永山絢斗、毎熊克哉、坂東龍汰、河合優実、佐久本宝、和田光沙など若手注目株が集結し、絶妙のアンサンブルで魅せる。
冬に咲く薔薇と書いて「ふゆそうび」。よくある再生の物語ではない。だが、冷たい冬の風のなかで健気に咲いた花にも似た何かが、このフィルムにはたしかに宿っている。オールロケ撮影で切り取られた横須賀の風景が、それを美しく彩る。
ずっと逃げてきた。見つめることが怖かった。
家族とも友人とも、自分自身の過去とも向き合えない。
冷たい隙間風に吹き付けられた魂は、どこに流れ着くのか──。
ある港町。専門学校にも行かず、半端な不良仲間とつるみ、友人や女から金をせびってはダラダラと生きる渡口淳(伊藤健太郎)。“ロクデナシ”という言葉がよく似合う中途半端な男だ。両親は埋立て用の土砂をガット船と呼ばれる船で運ぶ海運業を営むが、時代とともに仕事も減り、後継者不足に頭を悩ませながらもなんとか日々をやり過ごしていた。淳はそんな両親の仕事に興味も示さず、親子の会話もほとんどない。そんな折、淳の仲間が何者かに襲われる事件が起きる。そこに浮かび上がった犯人像は思いも寄らない人物のものだった……。
渡口淳(とぐち・じゅん)役
1997年6月30日生まれ、東京都出身。モデル活動を経て、2014年にドラマ「昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜」で俳優デビュー。以降「トランジットガールズ」(15)、「アシガール」(17)、「今日から俺は!!」(18)、連続テレビ小説「スカーレット」(20)など、多くの話題作に出演する。15年には『俺物語!!』(河合勇人監督)でスクリーンデビューを果たし、『デメキン』(17/山口義高監督)で映画初主演。以後『コーヒーが冷めないうちに』(18/塚原あゆ子監督)、『惡の華』(19/井口昇監督)、『今日から俺は!!劇場版』(20/福田雄一監督)、『弱虫ペダル』(20/三木康一郎監督)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20/藤井道人監督)、『とんかつDJアゲ太郎』(20/二宮健監督)、『十二単衣を着た悪魔』(20/黒木瞳監督)など話題作に多数出演する。本作『冬薔薇(ふゆそうび)』で阪本組初参加。
〈COMMENT〉
阪本順治監督とは今作の本が出来上がる前に初めてお会いし、2時間くらい沢山の話をさせていただきました。
監督に話した事が本に反映されている部分もあり、読んでいる時点で喜怒哀楽いろんな感情が僕自身の中に巻き起こりました。
監督は、キャストに対してスタッフに対して作品に対して、本当に愛に溢れている方です。常に現場にいてカメラのすぐ横で僕達の芝居を見てくれていますし、いてくださるだけで本当に安心します。
スクリーンで芝居が出来ること、カメラの前に立てる事に感謝しかありません。
観てくださる方々に何かしら受け取って頂けるような素敵な映画に必ずなります。どうか、劇場で見て頂きたいと思います。よろしくお願いします。
渡口義一(とぐち・よしかず)役
1951年9月4日生まれ。京都府出身。唐十郎主宰の「状況劇場」に参加。退団後、『はなれ瞽女おりん』(77/篠田正浩監督)で映画初出演。『十八歳、海へ』(79/藤田敏八監督)で報知映画賞新人賞を受賞する。以後、映画・舞台・ドラマ・CMなどで幅広く活躍。名実ともに日本を代表する俳優の1人。近年の主要な映画出演作に『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』(07/松岡錠司監督)、『歓喜の歌』(08/松岡錠司監督)、『海炭市叙景』(10/熊切和嘉監督)、『舟を編む』(13/石井裕也監督)、『旅立ちの島唄 〜十五の春〜』(13/吉田康弘監督)、『深夜食堂』(15/松岡錠司監督)、『武曲 MUKOKU』(17/熊切和嘉監督)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18/豊田利晃監督)、『夜明け』(19/広瀬奈々子監督)、『ねことじいちゃん』(19/岩合光昭監督)、『日本独立』(20/伊藤俊也監督)、『花束みたいな恋をした』(21/土井裕泰監督)、『Arcアーク』(21/石川慶監督)など。公開待機作に『はい、泳げません』(22年6月/渡辺謙作監督)がある。
〈COMMENT〉
台本の段階では、この終わり方で良いのかなって云う不安が正直ありましたが、完成試写を観て不安払拭、感動しました
自分のことはさて置き、阪本作品に参加させてもらい、大変貴重な時間を頂いたと思っています
観終わってしばらく経ってなんですが、ふとコレは俺のことなんじゃないかという思いが湧いてきました
もちろん、淳の人生と似ていると云う意味ではなく
若い時の出口の無い袋小路ってみなの中にもあるンじゃないのかな
ボクはたまたまと云うか、役者業の道に入りましたけど、別の道を歩んでいたらと思うと、淳達が遠いところの住人でもなく、とっても身近な存在に思えてきました
大人達にしたっても別段明るい明日があるわけでもない、
みな、出口の無い袋小路で、もがくようにして生きている
それが何だか分かりませんが、ボクには希望でもあるように観えてきたのです
渡口道子(とぐち・みちこ)役
1956年5月12日生まれ。神奈川県出身。劇団「東京壱組」の活動を経て、映画・TVドラマへと活動の場を広げる。08年度、毎日映画コンクール田中絹代賞受賞のほか、『おくりびと』(08/滝田洋二郎監督)、『ディア・ドクター』(09/西川美和監督)、『あなたへ』(12/降旗康男監督)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得するなど受賞歴多数。また19年には紫綬褒章を受章している。主な映画出演作に『うみ・そら・さんごのいいつたえ』(92/椎名誠監督)、『新・仁義なき戦い。』(00/阪本順治監督)、『ホテル・ハイビスカス』(02/中江裕司監督)、『孤高のメス』(10/成島出監督)、『繕い裁つ人』(15/三島有紀子監督)、『後妻業の女』(16/鶴橋康夫監督)、『シン・ゴジラ』(16/庵野秀明総監督)、『おもてなし』(18/ジェイ・チャン監督)、『ステップ』(20/飯塚健監督)、『総理の夫』(21/河合勇人監督)、『ノイズ』(22/廣木隆一監督)などがある。
〈COMMENT〉
阪本順治監督との仕事は三作目だが、いつもドキドキドキする。監督の言葉、脚本、演出だから人をよくみている。自分の本性を見透かされそうで、恐ろしい!
主人公の伊藤健太郎さんとは初めての出会いだが、役どころとは裏腹に力むことなく、ずっと優しく穏やか。母親役の私の息子としてリアルに存在していて有難い!
夫役の小林薫さんや諸先輩方は、実人生とお芝居との境目がなく、とても自由で幸せな現場だった!
冬薔薇というタイトル!とても切なくて儚い感じだが、冬に薔薇が咲くのは、間違いなのか?勘違いなのか?でも夏の薔薇のように、北風にも負けずスックと花は咲く。全員がちょっとずつ誤解しながら生きている、そんな人達の物語。解っちゃいるけど、生きるって大変!
とても静かに心に沁みてくる。面白いと思う。
中本祐治(なかもと・ゆうじ)役
1972年10月3日生まれ、東京都出身。88年、NHK大河ドラマ「武田信玄」で俳優デビュー。同年『ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー』(小原宏裕監督)で映画初主演を果たす。『愚か者傷だらけの天使』(98)、『ぼくんち』(02)、『この世の外へクラブ進駐軍』(03)、『亡国のイージス』(05)など阪本順治監督作への出演多数。『あの夏、いちばん静かな海』(91)、『BROTHER』(00)などの北野武監督作品でも知られる。
美崎輝(みさき・てる)役
1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年、ドラマ「おじいさん先生 熱闘篇」で俳優デビュー。08年『フレフレ少女』(渡辺謙作監督)で映画初出演し、10年の映画初主演作品『ソフトボーイ』(豊島圭介監督)で第34回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。主な映画出演作は『ふがいない僕は空を見た』(12/タナダユキ監督)、『海辺の生と死』(17/越川道夫監督)、『エルネスト』(17/阪本順治監督)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18/豊田利晃監督)など。公開待機作品に『峠最後のサムライ』(22/小泉堯史監督)、『LOVE LIFE』(22/深田晃司監督)がある。
君原玄(きみはら・げん)役
1987年3月28日生まれ。広島県出身。16年、主演映画『ケンとカズ』(小路紘史監督)で脚光を浴び、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞等、多くの賞を受賞。近年の主な映画出演作は『北の桜守』(18/滝田洋二郎監督)、『万引き家族』(18/是枝裕和監督)、『いざなぎ暮れた。』(20/笠木望監督)、『孤狼の血 LEVEL2』(21/白石和彌監督)、『猫は逃げた』(22/今泉力哉監督)など。公開待機作品に『妖怪シェアハウス』(22/豊島圭介監督)がある。
中本貴史(なかもと・たかし)役
1997年5月24日生まれ。北海道出身。2017年、俳優デビュー。18年、ドラマ「花へんろ 特別編 春子の人形」に初主演し、一躍注目を集める。主な映画出演作に『十二人の死にたい子どもたち』(19/堤幸彦監督)、『閉鎖病棟─それぞれの朝─』(19/平山秀幸監督)、『犬鳴村』(20/清水崇監督)、『弱虫ペダル』(20/三木康一郎監督)、『スパイの妻』(20/黒沢清監督)、『フタリノセカイ』(22/飯塚花笑監督)など。公開待機作品に『峠 最後のサムライ』(22/小泉堯史監督)がある。
美崎智花(みさき・ともか)役
2000年生まれ。東京都出身。19年デビュー。21年出演『サマーフィルムにのって』(松本壮史監督)、『由宇子の天秤』(春本雄二郎監督)での演技が高く評価され、第43回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第35回高崎映画祭最優秀新人俳優賞、第95回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞、第64回ブルーリボン賞新人賞などを受賞。22年は『ちょっと思い出しただけ』(松居大悟監督)、『愛なのに』『女子高生に殺されたい』(城定秀夫監督)、『PLAN75』(早川千絵監督)、『ある男』(石川慶監督)の他、多くのドラマ・舞台にも出演。
友利洋之(ともり・ひろゆき)役
1998年7月22日生まれ。沖縄県出身。沖縄の伝統芸能をベースにした現代版組踊の舞台で活動。2016年には、1200人のオーディションを勝ち抜いて、『怒り』(李相日監督)で映画デビュー。第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受する。主な映画出演作に『あの頃、君を追いかけた』(18/長谷川康夫監督)、『凪待ち』(19/白石和彌監督)、『惡の華』(19/井口昇監督)などがある。
澤地多恵子(さわち・たえこ)役
1983年12月30日生まれ、東京都出身。緒方明監督のワークショップを経て、2008年に同監督の『靴が浜温泉コンパニオン控室』で映画デビュー。以降、映画を中心に舞台やドラマなど幅広く活躍する。主な映画出演作に『あんこまん』(14/中村祐太郎監督)、『菊とギロチン』(18/瀬々敬久監督)、『ハード・コア』(18/山下敦弘監督)、『岬の兄妹』(19/片山慎三監督)、『由宇子の天秤』(21/春本雄二郎監督)、『やまぶき』(22/山崎樹一郎監督)などがある。
近藤次郎(こんどう・じろう)役
1970年9月10日生まれ。兵庫県出身。映画・ドラマ・CM・舞台など幅広く活動する。『KT』(02)、『大鹿村騒動記』(11)、『北のカナリアたち』(12)、『人類資金』(13)など阪本順治監督作への出演多数。他の映画出演作に『ざわざわ下北沢』(00/市川準監督)、『探偵事務所5』(09/林海象監督)、『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(12/若松孝二監督)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18/豊田利晃監督)、『生理ちゃん』(19/品田俊介監督)、『太陽の子 』(21/黒崎博監督)などがある。
永原健三(ながはら・けんぞう)役
1949年3月28日生まれ。東京都出身。67年、NHKのドラマ「高校生時代」で俳優デビュー。以後、声優・ナレーターとして活躍。82年には『ウィークエンド・シャッフル』(中村幻児監督)で映画デビューを果たす。主な映画出演作に『太陽の帝国』(88/スティーヴン・スピルバーグ監督)、『カンゾー先生』(98/今村昌平監督)、『突入せよ!「あさま山荘」事件』(02/原田眞人監督)、『のみとり侍』(18/鶴橋康夫監督)などがある。
沖島達雄(おきしま・たつお)役
1941年8月9日生まれ。東京都出身。1950年代から現在まで、映画・演劇・テレビなど幅広い分野で膨大な作品に出演してきた。日本を代表する俳優の1人。『大鹿村騒動記』(11)、『北のカナリアたち』(12)、『人類資金』(13)、『団地』(16)、『半世界』(19)、『一度も撃ってません』(20)など阪本順治監督作にも欠かせない存在。他の主な映画出演作に『竜馬暗殺』(74/黒木和雄監督)、『赫い髪の女』(79/神代辰巳監督)、『四十七人の刺客』(94/市川崑監督)、『アウトレイジ』(10/北野武監督)、『四十九日のレシピ』(13/タナダユキ監督)、『孤狼の血』(18/白石和彌監督)などがある。
1958年10月1日生まれ、大阪府出身。大学在学中より石井聰亙(現:岳龍)監督、井筒和幸監督などの現場にスタッフとして参加。89年、赤井英和主演『どついたるねん』で監督デビュー。多くの映画賞を受賞する。藤山直美を主演に迎えた『顔』(00)では、日本アカデミー賞最優秀監督賞、キネマ旬報日本映画ベスト・テン1位など主要映画賞を総なめにした。以降もハードボイルドな群像劇から歴史もの、喜劇、SFまで幅広いジャンルで活躍。その他の主な作品に『傷だらけの天使』(97)、『新・仁義なき戦い。』(00)、『KT』(02)、『亡国のイージス』(05)、『魂萌え!』(07)、『闇の子供たち』(08)、『座頭市THE LAST』(10)、『大鹿村騒動記』(11)、『北のカナリアたち』(12)、『人類資金』(13)、『団地』(16)、『エルネスト』(17)、『半世界』(19)、『一度も撃ってません』(20)、『弟とアンドロイドと僕』(22)などがある。
〈COMMENT〉
脚本執筆以前、伊藤健太郎に逢い、生まれてからこれまでのことを、SNS上の噂も含め、あれこれと執拗に訊いた。云いにくいことも多々あったと想うが、彼は、なにも誤魔化さずに応えてくれた。そして、こんな感想を持った。伊藤健太郎は、笑顔を絶やさない賑やかなやつだが、それはもしかしたら虚像かもしれず、実像は、心に捻れをかかえ、戸惑いのまま生きている青年だ、と。だから、その性質を、脚本に生かそうと想った。彼は怒るかもしれないが、いまはまだ辺境をうろつき、誰かを待っている途上だ。
俳優とは、自身の中に他者の居場所をさがす仕事だ。不遜な云い方だが、そのお手伝いができるとしたら、光栄だと想った。それは、彼のことを気に入ったからだ。それ以外、なにもない。
彼はいま、撮影現場で、俳優としてだけでなく、余力あれば、スタッフとしても働いてくれている。
2022年12月2日(金)発売
2022年12月2日(金)より各種プラットフォームにて配信開始
2022年/日本/カラー/スコープサイズ/5.1ch/109分/PG12
提供:木下グループ/配給:キノフィルムズ
©2022「冬薔薇(ふゆそうび)」FILM PARTNERS
※配信開始日・終了日は各プラットフォームにより異なる場合がございます。Blu-ray・DVDはメーカーウェブサイト、各小売店等にてお買い求めください。