キノフィルムズ

公開終了
2019年11月15日(金)公開

ベル・カント とらわれのアリア

副大統領邸を占拠したテロリストと人質たちが、世界的オペラ歌手の歌をきっかけに心を通わせていく。
Amazon ベスト・ブック・オブ・ザ・イヤーに輝くベストセラー小説を
日米豪華キャスト〈ジュリアン・ムーア×渡辺謙×加瀬亮〉で映画化

イントロダクション

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実業家のホソカワは通訳のゲンと共に招かれた、南米某国の副大統領邸でのパーティーを心待ちにしていた。ホソカワの会社の工場誘致を目論む主催者が、彼が愛してやまないソプラノ歌手のロクサーヌ・コスのサロンコンサートを企画したのだ。現地の名士や各国の大使も集まり、女神のようなロクサーヌの歌声が流れたその時、突然テロリストたちがなだれ込み邸を占拠する。収監中の同志の解放を求める彼らは、赤十字から派遣されたメスネルを介して政府と交渉をするが平行線が続く。そんな中、ロクサーヌの歌をきっかけに、貧しく教育など受けられるはずもなかったテロリストたちと、教養に溢れた人質たちの間に、親子や師弟のような交流が生まれ始める。しかし、かりそめの楽園に終わりの時が近づいていた──。
世界的なオペラ歌手のロクサーヌ・コスに扮するのが、ジュリアン・ムーア。女性が解放される中、著名人であるために人質としてとらわれるも毅然とふるまうコスを情感豊かに演じた。コスの歌声を当代随一のソプラノ歌手と称えられるルネ・フレミングが吹き替えた。『シェイプ・オブ・ウォーター』の挿入歌「ユール・ネヴァー・ノウ」でも知られる歌姫の、この世のものとは思えない崇高な歌声が存分に堪能できる。
崇拝するコスを守ると共に、独自の美学を貫く実業家のホソカワに渡辺謙。彼のこれまでの人生のバックグラウンドをも感じさせる、厚みのある演技で魅了する。ホソカワの通訳を務めるゲンに加瀬亮。聡明で沈着冷静な男が、テロリストの一人に英語を教えるうちに心を通わせていく姿を繊細に演じた。また、赤十字の交渉人メスネルには、『ブリッジ・オブ・スパイ』のセバスチャン・コッホ、フランス大使ティボーに『ヒトラーと戦った22日間』のクリストファー・ランバートと、ベテラン俳優が物語にリアリティをもたらした。監督は脚本も手掛けた『アバウト・ア・ボーイ』でアカデミー賞®脚色賞にノミネートされたポール・ワイツ。
人の心を救うのは“力”ではなく、美しい芸術や温かな交流だと教えてくれる感動の人間ドラマ。

ストーリー

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「フライトは長いし、着けば兵隊だらけで、銃を振り回してる。怖くてたまらないの」と、電話の相手に嘆くのは、世界的オペラ歌手でアメリカ人のロクサーヌ・コス(ジュリアン・ムーア)だ。1996年、南米某国。コスは副大統領邸で開催されるサロンコンサートを控えていた。この国の政府から工場誘致のために招かれた日本の実業家ホソカワ(渡辺謙)が、コスの長年のファンであることから企画されたのだが、フランス大使のティボー(クリストファー・ランバート)ら各国のVIPも招待されていた。
通訳のゲン(加瀬亮)を通してコスと対面を果たしたホソカワは、こよなく愛する「月に寄せる歌」を最後に歌うと聞いて感激し、最前列の席に着く。女神のように美しいコスの歌声に陶然としたその時、突然、銃声が鳴り響き、「我々は南リバタリアン運動の戦士」だと名乗りを上げながら、武装したテロリストたちがなだれ込む。彼らはマスダ大統領をとらえようとするが、大統領は直前に欠席を決め、その場にはいなかった。
邸内にいた全員が人質となったまま朝を迎え、赤十字国際委員会から交渉人としてメスネル(セバスチャン・コッホ)が派遣される。テロ組織のベンハミン指揮官(テノッチ・ウエルタ)は彼に、自分たちの要求は刑務所に拘束された政治犯全員の釈放だと告げ、女性と使用人の解放には応じたが、コスは「有名人だから」という理由で残される。その時、コスを心配して取り乱した伴奏者が、驚いた少年テロリストに射殺されるという事態が起きてしまう。
ホソカワはゲンを通してコスに、実は工場を作る気はなく、あなたの歌を独占できるという虚栄心から招待を受けたので、伴奏者の死に責任を感じていると伝えるが、コスは責められるべきは気乗りがしないのにお金のために来た自分のほうだと答え、互いをいたわり合うのだった。
膠着状態のまま1週間が過ぎた朝、政府は邸の水道を止めるという強硬策に出る。指揮官はコスに「人質が誰かを思い出させる」ために歌ってくれと頼む。悩んだコスは、ホソカワの「あなたの声は誰のものでもない」という言葉に励まされ歌うことを決意する。屋上から魂を込めた歌声を披露するコスに、テロリストと人質はひとつになって熱い拍手を送るのだった。さらに、その光景は集まったテレビ局によって全世界へと配信され、マスダ大統領の「人質の安全を最優先に」という声明と共に、邸への給水は再開された。
コスの歌をきっかけに、邸内の人間関係が大きく変わり始める。テロリストの少年がコスに歌を教えてほしいと願い、別の少年はティボーを父親のように慕う。さらに、コスの世話係になったカルメン(マリア・メルセデス・コロイ)が、ゲンにスペイン語と英語を教えてくれと頼む。教養に溢れ、人格者でもある人質たちに、テロリストたちが敬意と好意を抱くようになったのだ。いつの間にか共に食卓を囲むようになり、温かな絆も芽生えていく。だが穏やかな官邸の外では、もはや限界と判断した政府が、最後の作戦を実行しようとしていた─。

ジュリアン・ムーア

|ロクサーヌ・コス|
1960年12月3日、アメリカ、ノース・キャロライナ州生まれ。『ブギーナイツ』(97)、『ことの終わり』(99)、『めぐりあう時間たち』(02)、『エデンより彼方に』(02)でアカデミー賞®にノミネートされ、『アリスのままで』(14)で同賞とゴールデン・グローブ賞を受賞する。また、カンヌ、ベルリン、ヴェネチア国際映画祭の女優賞をすべて受賞した、初めてのアメリカ人女優でもある。その他の主な出演作は、『ハンニバル』(01)、『シングルマン』(09)、『キッズ・オールライト』(10)、『メイジーの瞳』(12)、『キャリー』(13)、『フライト・ゲーム』(14)、『キングスマン:ゴールデン・サークル』(17)など。新作は、ミシェル・ウィリアムズ共演の『After the Wedding』(19)、ジョー・ライト監督の『The Woman in the Window』、アリシア・ヴィキャンデル共演の『The Glorias』など。

渡辺 謙

|ホソカワ|
1959年10月21日、新潟県生まれ。トム・クルーズ共演の『ラスト サムライ』(03)で鮮烈なハリウッドデビューを飾り、アカデミー賞®、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされて以来、当代で最も重要なフィルムメイカーたちとコラボレーションしてきた。ロブ・マーシャル監督の『SAYURI』(05)、クリストファー・ノーラン監督の大ヒット作『バットマン ビギンズ』(05)と『インセプション』(10)、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』(06)などに出演。2018年には、ウェス・アンダーソン監督のアニメーション映画『犬ヶ島』で声の出演をする。その後も、『名探偵ピカチュウ』(19)、『ゴジラ キング・オブ・モンスター』(19)などの大作に出演する。新作は、若松節朗監督の『Fukushima 50』(20)。

加瀬 亮

|ゲン・ワタナベ|
1974年11月9日、神奈川県生まれ。生後まもなく渡米し7歳までアメリカのワシントン州で過ごす。2000年にスクリーンデビュー。2004年公開の『アンテナ』(熊切和嘉監督)で映画初主演を果たして以降、周防正行監督『それでもボクはやってない』(07)、クリント・イーストウッド監督『硫黄島からの手紙』(06)、北野武監督『アウトレイジ』(10)、アッバス・キアロスタミ監督『ライク・サムワン・イン・ラブ』(12)、ホン・サンス監督『自由が丘で』(14)、森崎東監督『ペコロスの母に会いに行く』(13)、山田太一脚本「ありふれた奇跡」(09)、堤幸彦監督「SPEC」(10)シリーズなど映画を中心にテレビドラマ、CM、舞台等、メジャー、インディペンデントを問わず、国内外の作品に出演。新作は、ジョニー・デップ共演の『Minamata』(20)。

クリストファー・ランバート

|フランス大使ティボー|
1957年3月29日、アメリカ、ニューヨーク州生まれ。リュック・ベッソン監督の『サブウェイ』(85)でセザール賞を受賞して注目される。続く『ハイランダー』シリーズ(86/90/94)が世界中で大ヒットを記録し、広くその名を知られる。その他の主な出演作は、マイケル・チミノ監督の『シシリアン』(87)、『モータル・コンバット』(95)、『ベオウルフ』(98)、『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』(15)、『ヒトラーと戦った22日間』(18)など。プロデューサーとしても活躍、『9か月』(95)などを手掛ける。

セバスチャン・コッホ

|赤十字のメスネル|
1962年5月31日、ドイツ生まれ。ドイツで最も成功を収めた俳優の一人。『善き人のためのソナタ』(06)でブレイクし、国際的に知られる。『ダイ・ハード/ラスト・デイ』(12)ではブルース・ウィリスの敵役を演じる。続いて、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ブリッジ・オブ・スパイ』(15)、トム・フーパー監督の『リリーのすべて』(15)に出演し、高く評価される。その他の主な出演作は、ポール・ヴァーホーヴェン監督の『ブラックブック』(06)、リーアム・ニーソン共演の『アンノウン』(11)など。

テノッチ・ウエルタ

|ベンハミン指揮官|
メキシコを代表する俳優の一人。メキシコのアカデミー賞にあたるアリエル賞に5回ノミネートされ、『クライム・シティ』(11・未)で受賞する。主な出演作は、ガエル・ガルシア・ベルナル監督・主演の『太陽のかけら』(07)、キャリー・ジョージ・フクナガ監督の『闇の列車、光の旅』(09)、『CLONES クローンズ』(10・未)、メル・ギブソン共演の『キック・オーバー』(12)、『デッドハント』(15・未)、Netflixの人気シリーズ「ナルコス:メキシコ編」(18~)など。

マリア・メルセデス・コロイ

|カルメン|
グアテマラで生まれ育つ。初めてプロとして出演した作品が、ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作の『火の山のマリア』(15)。監督のハイロ・ブスタマンテが、サンタ・マリア・デ・ヘススの町で彼女を見つけ、主役に抜擢した。2018年、自身初となるTVシリーズ「Malinche」でタイトルロールを演じる。新作は、ブスタマンテ監督と再びタッグを組む『La Llorona』(19)。

スタッフ

  • 監督・脚本:ポール・ワイツ

    1965年11月19日、アメリカ、ニューヨーク州生まれ。『アメリカン・パイ』(99)で監督デビュー。ヒュー・グラント主演の『アバウト・ア・ボーイ』(02)で、弟のクリスと共に脚本と監督を務め、アカデミー賞®脚色賞にノミネートされる。脚本と監督を担当した作品には、『イン・グッド・カンパニー』(04・未)、『アメリカン・ドリームズ』(06・未)、『ミート・ザ・ペアレンツ3』(10・未)、『ロバート・デ・ニーロ エグザイル』(12・未)、『アドミッション -親たちの入学試験-』(13・未)、『愛しのグランマ』(15・未)などがある。TVでは、ゴールデン・グローブ賞を受賞した「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」(14~18)のクリエイター、脚本、監督、製作を担当する。

  • 原作:アン・パチェット

    1963年12月2日、アメリカ、ロサンゼルス生まれ。1992年に「The Patron Saint of Liars」を出版。1998年にTVシリーズとして放映される。2001年に4番目の小説となる「ベル・カント」を出版。全米で100万部以上を売り上げ、30の言語に翻訳された同作は、その年のPEN/フォークナー賞とオレンジ賞を受賞。さらにAmazonのベスト・ブック・オブ・ザ・イヤーにも輝く。映画の公開を機に、文庫版が早川書房より10月下旬に再販される。2011年には「密林の夢」(2014年・早川書房)を出版。2012年にTIME誌の選ぶ“世界で最も影響のある100人”に選出される。現在はテネシー州のナッシュビル在住。

  • 脚本・製作:アンソニー・ワイントラーブ

    脚本家、映画、TVのプロデューサー、監督。事業パートナーで妻でもあるキャロライン・バロンと共に、製作会社Aライン・ピクチャーズを通して本作の製作を担当。『マトリックス』(99)を基にしたオムニバス・アニメ『アニマトリックス』(03)のセリフとストーリー編集にも貢献。その後、松本大洋の画期的なコミックを映画化したアニメ『鉄コン筋クリート』(06)の脚本を手掛ける。

  • 製作:キャロライン・バロン

    映画、TVプロデューサー。事業パートナーで夫でもあるアンソニー・ワイントラーブと共に、製作会社Aライン・ピクチャーズを通して本作の製作を担当。その他、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した『モンスーン・ウェディング』(01)、アカデミー賞®ノミネート作品『カポーティ』(05)、ポール・ワイツ監督のTVシリーズ「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」(14~18)、Netflixで放送された「ワームウッド -苦悩-」(17)などを手掛ける。

  • 製作:リジー・フリードマン

    『ガタカ』(97)にスタッフとして携わり、プロデューサーとしては、『セックス・カウントダウン』(07・未)、『ハッピー・フライト』(03)、『イン・ザ・ダークネス』(10・未)、『プリズン・エクスペリメント』(15)、『エミリー 悪夢のベビーシッター』(15・未)などを手掛ける。2015年、事業パートナーのグレッグ・リトルとカレン・ローダーと共にプライオリティ・ピクチャーズを立ち上げる。

  • 撮影:トバイアス・デイタム

    ドイツ生まれ。『美しき獣』(12)、『スマッシュド ~ケイトのアルコールライフ~』(12・未)、『フランクとシンディ』(15・未)、『ラバーズ・アゲイン』(17・未)などを手掛ける。ポール・ワイツ監督とは、『愛しのグランマ』(15・未)と、自身が2017年と2018年にエミー賞にノミネートされたTVシリーズ「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」(14~18)でタッグを組んでいる。

  • 音楽:デヴィッド・マズリン

    作曲家、音楽プロデューサー。ニューヨーク在住の日本人ジャーナリスト佐々木芽生監督のドキュメンタリー『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』(08)とその続編『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』(13)、同監督の『おクジラさま ふたつの正義の物語』(16)を手掛ける。『サンシャイン・クリーニング』(08)、ロマン・ポランスキー監督の『ゴーストライター』(10)、ライアン・ゴズリング主演の『幸せの行方...』(10)にも曲を提供している。

  • 歌唱吹き替え:ルネ・フレミング

    1959年2月14日、アメリカ生まれ。ソプラノ歌手。当代随一とも言われ、レパートリーはリヒャルト・シュトラウス、モーツァルト、ヘンデルの作品、ベルカント、ドイツ歌曲、フランスのオペラ作品やシャンソン、ジャズ、インディーズ・ロックなど幅広く網羅している。国家芸術勲章とリチャード・タッカー賞の受賞者でもあり、世界中のオペラ・ハウスやコンサート・ホールに定期的に出演。2001年と2006年にメトロポリタン歌劇場の公演で来日。2014年6月18日に3度目の来日を果たし、新国立劇場オペラパレスで開催された東京国際コンサートに出演した。

配信

2020年4月24日(金)より各種プラットフォームにて配信開始

ベル・カント とらわれのアリア

2017年/アメリカ/原題:BEL CANTO/カラー/シネマスコープ/5.1ch/101分/G
配給:キノフィルムズ・木下グループ
© 2017 BC Pictures LLC All rights reserved.
※配信開始日・終了日は各プラットフォームにより異なる場合がございます。Blu-ray・DVDはメーカーウェブサイト、各小売店等にてお買い求めください。