累計発行部数398万部超の大ベストセラーとして今なお読まれ続けている司馬遼太郎の名著「峠」が、待望の初映画化となる。
越後長岡藩の家老・河井継之助は、江戸をはじめとする諸国への遊学で世界を見据えるグローバルな視野を培い、領民のための斬新な藩政改革を次々と実行していた。
戊辰戦争が起こり、日本が東軍(旧幕府軍)か西軍(明治新政府軍)かに二分する中、戦争を回避しようと、近代兵器を備えてスイスのような武装中立を目指した。だが、平和への願いもむなしく、長岡藩もまた戦火に呑み込まれていく―。
世界的視野とリーダーシップで坂本龍馬と並び称され、敵対していた西郷隆盛や勝海舟さえもその死を惜しんだといわれる、知られざる英雄・河井継之助。「最後のサムライ」として正義を貫くその姿は、今に生きる私たちに何を語るのだろうか。
敵軍50,000人に、たった690人で挑んだ“最後のサムライ”
慶応3年(1867年)、大政奉還。260年余りに及んだ徳川幕府は終焉を迎え、諸藩は東軍と西軍に二分していく。
慶応4年、鳥羽・伏見の戦いを皮切りに戊辰戦争が勃発した。越後の小藩、長岡藩の家老・河井継之助は、東軍・西軍いずれにも属さない、武装中立を目指す。戦うことが当たり前となっていた武士の時代、民の暮らしを守るために、戦争を避けようとしたのだ。
だが、和平を願って臨んだ談判は決裂。継之助は徳川譜代の大名として義を貫き、西軍と砲火を交えるという決断を下す。
妻を愛し、国を想い、戦の無い世を願った継之助の、最後の戦いが始まった……。
河井継之助(長岡藩・家老
1956年、長崎県出身。95年に原田眞人監督『KAMIKAZETAXI』で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞。96年『Shallweダンス?』(周防正行監督)、『眠る男』(小栗康平監督)、『シャブ極道』(細野辰興監督)の3作品で14の国内主演男優賞を独占。東京国際映画祭主演男優賞を受賞した黒沢清監督の『CURE』(97)、カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した『うなぎ』(97/今村昌平監督)など、国際映画祭への出品作品も多い。12年、紫綬褒章を受章。同年、NYジャパンソサエティよりCUTABOVE賞、ハワイ国際映画祭からはキャリア功労賞を受賞。2017年にはドイツの日本映画祭「ニッポン・コネクション」でニッポン名誉賞、シンガポール国際映画祭でもシネマ・レジェンド賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を受ける。近年では『三度目の殺人』(17/是枝裕和監督)、『孤狼の血』(18/白石和彌監督)などに出演。『孤狼の血』では、自身3度目となる日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞、2019年第13回アジア・フィルム・アワードでは最優秀主演男優賞と特別賞Excellence in Asian Cinema Awardをダブル受賞。最新作『すばらしき世界』(21/西川美和監督)においては、シカゴ国際映画祭で、最優秀演技賞を受賞。アジアを代表する俳優の一人として活躍している。
おすが(継之助の妻)
1977年、東京都出身。93年歌舞伎座「人情噺文七元結」で初舞台を踏み、94年NHK大河ドラマ「花の乱」でTVドラマ初出演を果たす。98年、岩井俊二監督作品『四月物語』で映画初出演にして初主演を飾り、2009年には『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』(根岸吉太郎監督)で第33回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝く。主な映画出演作品に、『小さいおうち』(14/山田洋次監督)、『ジヌよさらば ~かむろば村へ~』(15/松尾スズキ監督)、『HERO』(15/鈴木雅之監督)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18/豊田利晃監督)、『来る』(18/中島哲也監督)、『マスカレード・ホテル』(19/鈴木雅之監督)、『ラストレター』(20/岩井俊二監督)など。小泉監督作品には初めての出演となる。
お貞(継之助の母)
1950年に銀幕デビュー後、『おかあさん』『稲妻』(52)、『驟雨』(56/成瀬巳喜男監督)、『東京物語』(53/小津安二郎監督)、『天国と地獄』(63)、『赤ひげ』(65/黒澤明監督)など錚々たる監督の名作に出演。『まあだだよ』(93/黒澤明監督)では、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を含む合計4つの女優賞に輝いた。その他、紫綬褒章、旭日小綬章、川喜多賞、FIAF賞など受賞・受章多数。小泉堯史監督作品への参加は『阿弥陀堂だより』(02)に続き2作目となる。
河井代右衛門(継之助の父)
1945年、東京都出身。74年より独自の活動を開始。「ハイパーダンス」と称した新たなスタイルを発展。映画初出演の『たそがれ清兵衛』(02/山田洋次監督)で第26回日本アカデミー最優秀新人賞、最優秀助演男優賞を受賞。主な出演作に『メゾン・ド・ヒミコ』(05/犬童一心監督)、『るろうに剣心』京都大火編/伝説の最期編(14/大友啓史監督)、『アルキメデスの大戦』(19/山崎貴監督)、『HOKUSAI』(21/橋本一監督)、『いのちの停車場』(21/成島出監督)など。
松蔵(継之助に仕える従僕)
1989年、東京都出身。2007年にTVドラマ「おじいさん先生 熱闘篇」(NTV)で俳優デビューし、翌08年には『フレフレ少女』(渡辺謙作監督)で映画初出演。10年の映画初主演作品『ソフトボーイ』(豊島圭介監督)で、第34回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞、一躍脚光を浴びる。近年の主な映画出演作品に、『海辺の生と死』(17/越川道夫監督)、『エルネスト』(17/阪本順治監督)、『泣き虫しょったんの奇跡』(18/豊田利晃監督)など。
むつ(長岡城下の旅籠・桝屋の 娘)
1997年、東京都出身。2013年に「ラスト♡シンデレラ」(CX)でデビュー。16年にNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」でヒロインを務めた。18年『累-かさね-』(佐藤祐市監督)、『散り椿』(木村大作監督)での演技が評価され、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。主な出演作に『居眠り磐音』(19/本木克英監督)、『今日も嫌がらせ弁当』(19/塚本連平監督)、『記憶屋 あなたを忘れない』(20/平川雄一朗監督)、『ファーストラヴ』(21/堤幸彦監督)、『Arc アーク』(21/石川慶監督)。
小山正太郎(小山良運の息子)
1997年、北海道出身。2017年に俳優デビューし、18年にNHKスペシャルドラマ「花へんろ 特別編 春子の人形」で主演し注目を浴びる。主な出演作に、『十二人の死にたい子どもたち』(19/堤幸彦監督)、『閉鎖病棟―それぞれの朝―』(19/平山秀幸監督)、『犬鳴村』(20/清水崇監督)、『静かな雨』(20/中川龍太郎監督)、『#ハンド全力』(20/松居大悟監督)、『スパイの妻』(20/黒沢清監督)、『ハニーレモンソーダ』(21/神徳幸治監督)などがある。
川島億次郎(長岡藩士。継之助 の幼馴染)
1956年、鹿児島県出身。78年に劇団四季に入団し、舞台「オンディーヌ」(81)で初主演。退団後、NHK連続テレビ小説「ロマンス」(84)の主演でドラマデビュー。95年にスタートした「浅見光彦シリーズ」は2002年まで主演を務める大ヒットシリーズとなる。主な出演作に、『帝一の國』(17/永井聡監督)、『きばいやんせ、私!』(19/武正晴監督)、『みとりし』(19/白羽弥仁監督)、『みをつくし料理帖』(20/角川春樹監督)、『天外者』(20/田中光敏監督)などがある。
花輪求馬(長岡藩・軍事掛)
1984年、東京都出身。2002年ドラマ「壬生義士伝 新撰組でいちばん強かった男」(TX)で俳優デビュー。近年の主な出演作は『るろうに剣心 京都大火編』(14/大友啓史監督)、『クロスロード』(15/すずきじゅんいち監督)、『散り椿』(18/木村大作監督・小泉堯史脚本)、『ウスケボーイズ』(18/柿崎ゆうじ監督)、『ある町の高い煙突』(19/松村克弥監督)、『時の行路』(20/神山征二郎監督)、『日本独立』(20/伊藤俊也監督)など。
山本帯刀(長岡藩・軍事掛)
1981年、静岡県出身。EXILEのパフォーマーとしての活動に加え役者としても活躍。『ちゃんと伝える』(09/園子温監督)で日本映画批評家大賞新人賞を受賞。2010年中国公開『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』(アンドリュー・ラウ監督)でアジア映画デビュー。マーティン・スコセッシ監督の『沈黙‐サイレンス‐』(17)に出演した。19年には童謡100周年を記念して作られた映画『この道』(佐々部清監督)で主演を果たす。
徳川慶喜(江戸幕府第15代征夷 大将軍)
1988年、埼玉県出身。2012年に『桐島、部活やめるってよ』(12/吉田大八監督)で俳優デビューし、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞等受賞。主な映画出演作に第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品の主演作『寝ても覚めても』(18/濱口竜介監督)、『コンフィデンスマンJP』シリーズ(19~20/田中亮監督)、第77回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞作『スパイの妻』(20/黒沢清監督)、『おらおらでひとりいぐも』(20/沖田修一監督)、『Blue』(21/吉田恵輔監督)など。
小山良運(継之助の盟友。長岡 藩・藩医)
1968年、京都府出身。2000年、NHK連続テレビ小説「オードリー」で注目され、05年に「Team申」を立ち上げる。主な映画出演作は、第38回日本アカデミー賞優秀主演男優賞受賞作『超高速!参勤交代』(14/本木克英監督)、『破門 ふたりのヤクビョーガミ』(17/小林聖太郎監督)、『嘘八百』(18/武正晴監督)、第43回日本アカデミー賞優秀助演男優賞受賞作『空母いぶき』(19/若松節朗監督)、『嘘八百 京町ロワイヤル』(20/武正晴監督)など。
月泉和尚 (濁沢村・阿弥陀寺の和尚)
1936年、旧満州・奉天出身。キネマ旬報主演男優賞に選出された『家族』(70/山田洋次監督)、『どですかでん』(70/黒澤明監督)や『忍ぶ川』(72/熊井啓監督)、『故郷』(72/山田洋次監督)、毎日映画コンクール助演男優賞受賞作品『乱』(85/黒澤明監督)、『タンポポ』(85/伊丹十三監督)、日本アカデミー賞助演男優賞に輝いた『八月の狂詩曲』(92/黒澤明監督)など、日本映画の数々の名作に出演。小泉堯史監督作品への出演は、本作が5作目となる。
老人
1937年、東京都出身。55年に俳優座養成所に入所。『裸の町』(57/久松静児監督)で銀幕デビューを飾る。その後、特異な存在感を放つバイプレーヤーとしての評価を確固たるものとした。80年に演劇プロデュースを目的とする「五五の会」を設立。93年に第18回菊田一夫演劇賞を受賞。近年の主な出演作に、『永遠の0』(13/山崎貴監督)、「おんな城主 直虎」(17/NHK)、「ハゲタカ」(18/EX)、「下町ロケット」(18/TBS)などがある。映画出演最新作は『騙し絵の牙』(21/吉田大八監督)。
岩村精一郎 (土佐藩・軍監)
1970年、埼玉県出身。子役としてデビューし、ドラマ「北の国から」シリーズなどで活躍。『男はつらいよ』シリーズには近作『男はつらいよ お帰り 寅さん』(19/山田洋次監督)を含む、計24作に出演。主演を務めた『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ(05~12/山崎貴監督)では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を2度受賞。小泉堯史監督作品には『雨あがる』(00)、『阿弥陀堂だより』(02)、『博士の愛した数式』(06)に続き、本作が4作目の出演となる。
牧野雪堂 (前長岡藩主)
1932年、東京都出身。俳優座付属養成所に4期生として入所。千田是也に師事し、「ハムレット」「四谷怪談」など多数の舞台に出演した。映画界では小林正樹監督に見いだされ、『黒い河』(56)、『人間の條件』(59、61)、『切腹』(62)などに出演。黒澤明監督『用心棒』(61)、『影武者』(80)、『乱』(85)、また成瀬巳喜男、岡本喜八、市川崑、五社英雄など、日本を代表する名監督の作品に多数出演し、舞台と映画を両輪としてキャリアを重ねた。アカデミー賞と世界三大映画祭(カンヌ・ヴェネチア・ベルリン)の全てで出演映画が受賞した実績を持つ。テレビドラマの代表作では「新・平家物語」(72/NHK)、「大地の子」(95/NHK)ほか多数。75年には役所広司も輩出した俳優を育成する私塾「無名塾」を、亡き妻・宮崎恭子(女優・脚本家・演出家)と共に設立。次代を担う俳優を数多く育て、また、塾員・塾生と共に無名塾公演で全国を巡演。「どん底」「リチャード三世」「ドライビング・ミス・デイジー」などの舞台で、芸術選奨文部大臣賞、毎日芸術賞、紀伊国屋演劇賞、読売演劇賞ほか数々の賞を受賞している。2007年文化功労者。勲四等旭日小綬章、川喜多賞、朝日賞など受章多数。15年文化勲章受章。小泉堯史監督作品には『雨あがる』(00)以来2度目の出演。
1944年、茨城県水戸市出身。70年に黒澤明監督に師事し、28年間に渡り助監督を務めた。黒澤監督の遺作脚本『雨あがる』(00)にて監督デビュー。この作品でヴェネチア国際映画祭の緑の獅子賞、日本アカデミー賞優秀作品賞をはじめとする8部門で受賞。その後、『阿弥陀堂だより』(02)、『博士の愛した数式』(06)、『明日への遺言』(08)、『蜩ノ記』(14)を監督。それぞれの作品で日本アカデミー賞、芸術選奨など数々の賞を受賞している。また18年公開『散り椿』では脚本を務めている。
東京藝術大学・大学院、パリ国立高等音楽院卒。NHKスペシャル「映像の世紀」のテーマ曲「パリは燃えているか」で知られる。映画音楽では、『The Quarry』で98年モントリオール世界映画祭最優秀芸術貢献賞。『阿弥陀堂だより』『博士の愛した数式』(02、06/小泉堯史監督)で毎日映画コンクール音楽賞。『最後の忠臣蔵』(10/杉田成道監督)、『阿弥陀堂だより』、『蜩ノ記』(14/小泉堯史監督)、『散り椿』(18/木村大作監督)で日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。